蛇紋岩米研究室(うまいもん研究室)

「うまいもん」とは何か。
グルメばやりというのか、いろいろと情報は溢れていますが、本当にうまいもんとは何か。
当研究室は、ちょっと違った角度からも考えてみたいと思います。

「うまいもん」とは単に味わいだけのことであってはならない。
「うまいもん」は身体を「うまい具合に」してくれる元でなければならない。
従って、安全であるとか安心であるとかは、当然にして当然、議論の必要は無い。
身体を「うまい具合に」するとはどういうことか、生理的に人体が生命体としてうまく機能し働くこと、これも当たり前で議論の必要が無い。
では本当に「うまいもん」とはさらにどんな働きや力が備わっているべきものなのか。
ほんとうに「うまいもんは」人の世から争いや貧困やあらゆる悲しみを取り除く力がそなわってなければならない。これが当研究所の見解である。話が飛びすぎている、その通りですが、でも確かにそうも言えませんか。「うまいもん」の争奪戦により人々は争い、競い合っているようですから話は複雑で深刻です。奪い合っている「うまいもんが」実は本当に「うまいもん」かどうか疑わなければいけないようです。なぜなら本当に「うまいもん」を手に入れ食した人は争いを起こさないはずですから。
本当に「うまいもん」にはそんな力があるはずです。それを「うまいもん」と当研究所は呼びたいのです。そして、そんな「うまいもん」を捜していきます。さて、あるのでしょうか。

当面の研究対象
1 高柳産の米、特に「蛇紋岩米」と呼ばれている「こしひかり」について 
「うまみ」について、あれこれといわれているので、とりあえず「うまみ」 について考察を試みる。

右図1は「おいしいコメはどこがちがうか」1992(社)農文協より、北海道立上川農業試験場、稲津脩論文より


2 米のうまみは何が左右するか。
要因が複雑にからんでいて解明は大変難しいことが図1からも解る。
しかし、私たちが「うまい」と感じている多くの要素は図の赤枠、さらには青枠のテクスチャーが大部分ではないかとの指摘もある。これは十分に納得できることでもある。
様々な文献、論文、経験等を総合して、あえて結論付けると、@米自身の持つ化学的要因が左右する食味の違いA米の持つ特質・特性を引き出す栽培法(収穫から乾燥・精米・貯蔵法も含む)図では左側に関係する。B産地と気象条件である。

@は品種改良によりうまい米が出現してきた。こしひかりが代表選手であろう。その特性は後で述べる。
Aこれにも様々な研究成果と実践がある。ここは研究者に譲る。Bは産地第一主義は間違い、と言う声もありながら根強く信じられている。「魚沼産」コシヒカリが代表的。産地ということは気象条件のほかに土壌を分析する必要があるが、産地の土壌を徹底的に比較検討した論文には未だ出会わない。

さて、当地の「蛇紋岩米」であるが、伝えられていることを整理し科学的に分析が可能であろうか。まず、蛇紋岩質の土壌が大きく作用しているという点と蛇紋岩質の地質から出る水が作用しているという点、さらに日照条件も論じられるが、どう考えても「土壌」を第一に分析すべきであろう。なぜなら、他地域と決定的に違うとすれば他に大きな影響を持つ要因がこれ以外に考えにくいからである。

仮説:蛇紋岩質の土壌は米作りによい。この地が蛇紋岩質土壌であるかどうかから見ていきたい。次の図は兵庫県の地質図(兵庫県地質鉱産図より)である。黄色く塗った部分が全国的にも珍しい蛇紋岩質の岩脈であり、関宮町から八鹿町朝倉付近にかけての鉱脈である。南側には大屋町、養父町も含まれる。大きな蛇紋岩のブロックが東西に走りこの土地の成り立ちの大きな特徴が見て取れる。この蛇紋岩が風化しこの地を流れる八木川の流れにより南北の河岸段丘的な僅かな平地が長い間に形成されたであろう。流域の北側の山脈の地質は蛇紋岩ではなく断層が走り南北の山の地質は全く二分される。しかし蛇紋岩質の土壌としては八木川の両側の土壌岩盤は変わらず。工事等で出土したサンプルからも視認できる露出岩からも明快である。おそらく長大な時間をかけてこの川は狭い山間を蛇行し氾濫を繰り返し、流れを変えながらこの南北の山脈の間を肥えた土を削り、運び、堆積させ続けたのであろう。地図の緑色が耕作地で、青色が蛇紋岩の鉱脈である。









八鹿町高柳を中心に蛇紋岩質の耕作地を表した。緑色がその地域。青色は蛇紋岩の岩脈である。
地図の西方関宮町中瀬あたりまでこの鉱脈は続いている。

3 蛇紋岩とその土壌
蛇紋岩は蛇紋岩石(Mg(Si205(OH)4)の化学組成を持つ鉱物群で、マグネシウムを多く含む鉱物である。このマグネシウムがコメの育成にどうかかわるのかを考察したい。
下記は石川県立農業短大 長谷川和久論文(1992「おいしいコメはどこがちがうか」農文協)より引用
ミネラル、微量要素の多い有色鉱物
「−おいしいコメが生産される地域は地形、土壌の面からみると河川の流域距離の長い川の沿岸で耕土深の深いところ、あるいは用水を受ける川の背後の山岳が高いか深い地形のところ、または大地が切土されたところなどで、土色は茶ないし褐色を呈しており、腐食に富む場合は黒褐色となっている。このことは、その土壌が有色鉱物ないしはこの鉱物を母材とする岩石の風化物によって生成されていることを示している。有色鉱物は一般に苦土や鉄、マンガンその他の微量要素を含むものが多い。窒素、リン酸およびカリの三要素を含む化成肥料だけで栽培されたコメは、しばしば他のケイ酸や石灰、苦土成分の施肥に配慮し栽培されたコメに比べてまずく、品質的に劣るといわれる。品種が同一の場合、たとへばコシヒカリのおいしさは、アミロース含有量や遊離の窒素化合物の存在のほか、基本的に現場の観察から土壌を構成する母材の違い、特に有色鉱物の多少、粘土鉱物の種類と量に大きく影響を受けていると考察している。
粘土の種類と食味
肥料成分の保持を土壌中でつかさどるのに大きな機能をもつ粘土鉱物は、有色鉱物を含む一次鉱物から生成する。例えば既述の有色鉱物と粘土鉱物の関係は図2のとおりである。−」

マグネシウムを多く含む蛇紋岩質の土壌がコメの生育に大きく作用していることが考えられる論文である。
次にこのマグネシウムがコメそのものに含まれるとうまみが増すという説を紹介する。
玄米に含まれているミネラルのうちマグネシウムとカリウムの比率、MG/Kが大きいほど甘みがあり粘りも出るという結果が最近出ていますが、そうであればマグネシウムを多く含むということが旨みを大きく左右しているということであり、蛇紋岩質土壌が土壌中の肥料成分を保持するのに優れていると同時に旨みを高めるミネラルを与える役割も果たしていることになる。
コシヒカリは特に土壌によっては全く旨みのないものにもなるとの指摘がある。山口県のこだわりの米作り農家の松原進氏が指摘している文献に出会った。「日本のコメづくり」外山不可止著の中で「砂土、壌土、埴土」の違いを説明しているが、この中で言われていることと前述のことは重なる。松原氏はさらに日照時間と昼夜の温度格差の条件が必用といい、有利な条件を備えている所として長野、福井、富山を挙げている。私見ではあるがこの地方は実は土壌の面でも前述の優れた条件を有しているのだ。特に富山県では蛇紋岩土壌の地域が存在している。

次にお米のでんぷん内の成分について(つづく)

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